去年の来日時に聞いたアラン氏のお話のなかで とても印象に残っているものがあります。
これは実話をもとにしたものだそうですが 昔、タイかどこかの国の寺院に、 それは巨大な黄金の仏像(確か・・)があったそうです。
僧侶たちは毎日その仏像を磨き、たいせつにしていたそうなのですが ある日、その町に他国の軍隊がやってくる!という情報が届きました。
寺のものたちは 「この仏像が軍隊に見つかったら、壊されてしまう! どうしよう・・・」 と慌てふためき、みんなで集まって対策を考えました。
すると、ある僧侶がひらめきました。
「そうだ!仏像を銅かなにかで覆って、黄金を隠してしまおう。 そうすれば、軍隊も目をつけないのではないか。」
その意見にうなづいた僧侶たちは、寺のものたち全員で作業にあたり 軍隊がやってくるという期限までに、無事「黄金を隠す作業」を終えました。
そして、いよいよ情報通り軍隊はやってきました。 仏像の足元を隊列が通るとき、僧侶たちはかたずをのんで見守ります。
すると「黄金隠し」が功を奏したのか、目をつけられることもなく 軍隊は仏像の前を通り過ぎていきました。
ほっと胸をなでおろす僧侶たち。 しかし、これで終わったわけではなかったのです。
軍隊はその町に駐留することになってしまいました。 それも、とても長い間・・・
いつしか、銅の仏像が、実は「銅に覆われた黄金像」であることを 知っている僧侶すらも絶えてしまうほど 長い、なが~い時がたってしまったのです。
町のひとびとも、その仏像はもともと銅像であると 当たり前に思うようになっていました。
・・・ さらに、時を経て。
ある日、寺の若い僧が巨大な仏像のひざに乗って、像を磨いていました。 すると、
ポロリ。
となにかが剥がれ落ち、中から黄金色のものが見えたのです。
??
剥がれ落ちたのは「銅」、そして見えたのは本来の姿である「黄金」。
仏像が本来は金の像であることに気づいた若い僧は、 他のものたちにそのことを告げ、また、はるか昔のときのように 今度もみんなで「銅はがし」の作業をしたのでした。
そして、長い時を経て、やっと像の本来の姿に戻ることが出来たのです。
お話はここまでで、アラン氏はこう言いました。
「この寓話が示すものはわかりますか? この仏像は、あなた自身と同じ。 あなたたちも、“本来は黄金であることを忘れてしまった銅像” のようなものなのですよ。」
「思い出してください。あなたたちは本来、輝く黄金の存在なのです。」
彼がそう言ったとき、ぱぁぁ・・・と明るい気に包まれたような心地がしました。 たぶん会場にいたみんなが、そのとき、とてもあたたかい「自己肯定」 という名の宝を受け取ったと思います。
数々の寓話を例えに、わかりやすく「大切な存在である自分」を 思い出させてくれ、ユーモアとともに大きなあたたかい愛を届けてくれる アランさんが、私は大好きです。
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